ウィリアム・モリスとその仲間たち [書籍一般]

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『ウィリアム・モリスとその仲間たち』、岩崎美術社から1978年に刊行されました。改訂版も平成に入ってから出版されています。もし絶版で本屋さんに無い場合でも、古書店を探すと1000円くらいでそこそこ状態の良いものが見つかります。

ウィリアム・モリスは、代官山に直営店もある人気のテキスタイル・デザイナー、キャス・キッドソン/Cath Kidston と同じ、イギリスのデザイナーです。モリスが活躍した時代は、産業革命後の賑やかな時代。大量生産のための工場が朝も晩もなく煙を吐き出し、少年少女までが「とにかく売れる、安価な品物」のために過酷な第二次産業に従事していた時代です。
産業革命以前は自分の職業と能力に誇りと自信を持って働いていた職人たちの中の何割かも、時代の波に飲み込まれるように工場での仕事に就くようになります。しかし簡単に想像できるように、工場での仕事は「職人」としての誇りや自信を満足させてくれるものではありませんでした。真に価値のあるものを造り出せる有能な職人たちが、工場での単純作業に身をやつし気力を失っていく、その結果、職人技が伝承されることなく「本物」が消え失せてしまうかもしれない・・。
そのような背景の中から生まれてきたのが、ウィリアム・モリスの「アーツ・アンド・クラフツ運動」です。モリスは、生活と芸術は同一の物であるという信念の基に活動していました。美しい、本当のものに囲まれて暮らす。それがすなわちモリスにとっての芸術活動だったのです。

お気に入りの家具や食器、洋服などを集めて「自分」をつくるという事は、現在では当たり前のことです。選択肢がありすぎて「自分らしさ」が見あたらない人だっているくらいです。しかし、モリスにとってはその行為は芸術へと結びつく重要なファクターでした。洗面台の蛇口ひとつ、椅子のクッションカバーひとつに至るまで、彼は美意識を張り巡らせました。私は、彼の生活に対しての考え方には深く共感します。

近年、特にガーデニング雑誌などでモリスが取りあげられることが多いようですが、安価なモノが溢れる現代に「生活そのものを芸術に」というモリスの主張は真実味を持って受け入れられているように感じます。
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palette

モリスとアーツ・アンド・クラフツ運動、すごく共感です。以前書いた記事がありましたので、トラックバックさせていただきました。(でも、トラックバックに慣れていないので、失敗したかも。どうかご確認お願いします。)この本は、図書館で借りて読んだ記憶があります。それにしても、素晴らしいコレクションですね!


by palette (2008-12-24 07:44) 

ジョウビタキ

>paletteさん
ありがとうございます!モリスは、美しいテキスタイルデザインのみならず、それを芸術へと昇華しようとしたことが彼にカリスマ性を与えているのでしょうね。今でも(今だから、でしょうか。)幅広い層から人気があるのも納得です。

by ジョウビタキ (2008-12-24 13:46) 

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