山のあなた [作家ばなし]

Über den Bergen weit zu wandern
Sagen die Leute, wohnt das Glück.      
Ach, und ich ging im Schwarme der andern,
kam mit verweinten Augen zurück.
Über den Bergen weti weti drüben,
Sagen die Leute, wohnt das Glück.

山のあなたの空遠く
「幸さいはひ」住むと人のいふ。
噫ああ、われひとと尋とめゆきて、
涙さしぐみ、かへりきぬ。
山のあなたになほ遠く
「幸さいはひ」住むと人のいふ。

明治に活躍した文学者・評論家・翻訳家の、上田敏が著作『海潮音』の中でも最も有名な一節です。良い詩ですね。
2008-12-31-6.jpg
最近読み返した田山花袋の自伝に、若き日の上田についての記述がありました。
独逸から帰国し、『即興詩人』『めざまし草』などで飛ぶ鳥を落とす勢いの森鴎外の活躍に対し「森さんの翻訳なんて、誤訳ばかりだ。いつかそれを指摘してやる。」と息巻く紅顔の美青年、というような描写でした。とは言っても、以後花袋と上田の仲は、それほど接近はしなかったようです。理由について、花袋は上田が『明星』に多く筆を執るようになったから、と・・『明星』は、花袋の著作という著作をこっぴどく批評しました。
他にも同世代の文学者・国木田独歩や島崎藤村、柳田国男らが登場し、先輩文豪(とは言っても歳はそれほど変わらない)に比肩する立派な作家になるため、日々筆をとり議論を戦わせ出会いや別れを経験し人生に苦悩する様がいきいきと描かれています。ちなみに田山花袋の『東京の三十年』という著作です。
いつの時代も、志ある若者が先達に対抗意識を燃やし、挫折の中から新しい潮流を生み出していくという流れに変わりはないのだと再確認させられます。

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まおまお

はじめまして。
先日はご来訪&nice!ありがとうございましたv
味わい深い本をたくさんお持ちなんですね。素敵です。


by まおまお (2009-01-07 18:34) 

ジョウビタキ

>まおまお さん
こちらこそ、ありがとうございます!
by ジョウビタキ (2009-01-08 20:46) 

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